信長公記は、上臈衆が天主の金銀を取って火をかけて退くよう言ったのに対し、蒲生右兵衛大輔は、信長が心を尽くして造った屋形を焼くのは畏れ多く、財宝を奪い合うのも世間の嘲りを受けると考え、安土の構えを木村次郎左衛門に渡して上臈衆の警固を命じて退いた、と記す。書き下し・現代語訳の語句の解釈(無冥加など)にはAIの判断が含まれる。
原文 AI作成
六月三日未刻 のかせられ候へと申され候御上﨟衆被仰樣とても安土打捨のかせられ候間御天主に在之金銀太刀刀を取火を懸罷退候へと被仰候處 蒲生右兵衞大輔希代無欲之存分有 信長公年來御心を被盡鏤金銀天下無双之御屋形作 蒲生爲覺悟燒拂空ク可成赤土事無冥加次第也其上金銀御名物可致乱取事都鄙之嘲哢如何候也安土御搆 木村次郞左衞門に渡置夫〱に御上﨟衆へ警固を申付退被申候
書き下し AI作成
六月三日、未の刻、「退かせられ候へ」と申され候。御上臈衆の仰せらるるやう、「とても安土を打ち捨て退かせられ候間、御天主にある金銀・太刀・刀を取り、火を懸けて罷り退き候へ」と仰せ候ところ、蒲生右兵衛大輔、希代の無欲の存分あり。信長公、年来御心を尽くされ、鏤め金銀、天下無双の御屋形を作られしを、蒲生の覚悟として焼き払ひ、空しく赤土と成さんこと、無冥加の次第なり。その上、金銀・御名物を乱取りすることは、都鄙の嘲哢、いかが候や。安土の御構へは木村次郎左衛門に渡し置き、それぞれに御上臈衆へ警固を申し付け、退き申さる。
現代語訳 AI作成
六月三日の未の刻、(安土から)退去するようにと申された。上臈衆は「どうせ安土を打ち捨てて退くのだから、天主にある金銀・太刀・刀を取り、火をかけて退け」と仰せになったが、蒲生右兵衛大輔は世にも稀な無欲の考えを持っていた。信長公が長年心を尽くして金銀を散りばめた天下無双の御殿を造られたのに、蒲生の一存で焼き払って赤土にしてしまうのは畏れ多いことであり、そのうえ金銀や名物を奪い合うのは、都でも田舎でも嘲りの種になるだろう、というのである。安土の構えは木村次郎左衛門に渡し置き、それぞれに上臈衆の警固を申し付けて退去した。